現在、映画を見る時にはほぼ必ずと言っていいほど宣伝、「どこどこで何とか賞を受賞!」などの前情報や、友人からの口コミなど、多くの先入観が付きまとってしまいます。しかし、東学祭のセレクションで応募作品を見る時に委員内で共有される知識は、監督名、タイトルと尺、それから「学生が製作した映画」という前提だけ。

選定する立場にある私たちは、評判や誰かの評価といった後ろ盾がないまま、ありのままの映画と裸一貫で向き合わねばなりませんでした。こんな風に映画を見る経験は本当に貴重で、考えてみると、東学祭のセレクションだったからこそのとても自由で有意義な映画体験だったと思います。213本の映画を完成させた学生映画人に感謝するとともに、敬意を表します。

第30回東学祭に応募して下さった皆様、本当にありがとうございました。

そんな私たちが全力で向き合い、上映が決定した16本の映画をご紹介します。「学生映画を学生である私たちが選ぶ」とはどういうことなのか、考えに考えさせられ、未だきちんとした答えは出ていませんが、この16本の映画が答えらしき何かに導いてくれると信じています。

第30回東京学生映画祭企画委員会

『なみぎわ』

多摩美術大学 / 2018 / 20分
監督:常間地 裕(TSUNEMACHI Yutaka)

高校卒業をまじかに控えた大吾(18)と、高校に通うことのできなかった大翔(18)は小さな港町で暮らしていた。 友達である2人にとっての何気ない日常が、これからの2人とって特別な1日へと変わっていく。 『大人』と『子供』、その間で揺れながら生きる2人の物語。

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『中村屋兄弟の酒店』

目白大学 / 2019 / 45min
監督:白磯大知(SHIRAISO Daichi)

数年前家を出て一人東京で暮らす和馬は、親が経営していた酒屋を継いだ兄、弘文の元へ帰ってくる。久々に訪れた実家は昔のままの懐かしさの中に確実に変わってしまったものがあった。 刻々と変わっていく今に戸惑い、必死に否定して、生きようとするふたり。

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『リベンジ!』

京都造形芸術大学 / 2018 / 75min
監督:河谷 忍(KAWATANI Shinobu)

廃業寸前の私立探偵、キリシマ(中村瞳太)と売れないバーマジシャン、キツネ(河谷 忍)。 二人を繋いだのは悩める美女、サワコ(鈴木麻由)からのとある依頼。「あの人から、携帯電話を回収して欲しいの」 全てはそこから始まる。小さな偶然が、大きな奇跡を呼ぶ…はずだった。予算、たったの40万円。 卒業制作展で映像部門唯一の優秀賞を受賞。 練り込まれた脚本と演出で観客の度胆を抜くエンタメムービー。

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『歴史から消えた小野小町』

東京藝術大学 / 2018 / 28min
監督:大野キャンディス真奈(OHNO CANDICE Mana)

小野小町は歴史上では存在しない伝説の人物。そんな小町が一人の少女の前に亡霊となり現れ取り憑かれる。小町の隠された波乱万丈の人生が、彼女の出生の地、秋田県湯沢市を巡り暴かれていく。

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『それはまるで人間のように』

専門学校東京ビジュアルアーツ / 2019 / 84min
監督:橋本根大(HASHIMOTO Nebiro)

指一つで何もかも創造と消滅することの出来る能力を持つ鈴木翔と、そんな鈴木と一緒に暮らすハナ。鈴木は自らの力に頼り仕事をせずに生きてきた。ハナはそんな鈴木との生活に満足を覚えながらもどこか窮屈さを感じていた。そんなある日、ちょっとしたことがきっかけとなり鈴木と喧嘩をしてしまう。喧嘩が元となり鈴木は仕事を始めるが、仕事を始めたことにより二人の関係が歪み始める。

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『ツヤ子81歳』

武蔵野美術大学 / 2018 / 45min
監督:中川楓子(NAKAGAWA Fuko)

この作品は81歳になった私のおばあちゃんを一人の女性として掘り下げたドキュメンタリーです。 大学に進学してから会えるのは年に1~2回。気付けばおばあちゃんは80歳を超え途端に“老い”が進み、耳が遠くなったりしたことのなかった入退院を繰り返していました。離れて暮らすおばあちゃんと地元で暮らす予定がない私にとって、一緒に居られるチャンスは今しかないと思いカメラを持って大阪に帰ることにしました。

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『moondust』

日本大学芸術学部 / 2019 / 29min
監督:霧道百桃(KIRIMICHI Momo)

花を食べて生活しているエル。友人やバイト先の店長とともに、穏やかで楽しい生活を送る中、謎の少年と出会う。一緒に花を食べたり、素敵な場所に連れ出してくれる彼に夢中になってゆくが、身体は次第に疲れ果ててゆき…

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『ワンダラー』

映画美学校 / 2019 / 32min
監督:小林瑛美(KOBAYASHI Emi)

海外旅行の一週間前、恋人から出張が入ったと言われ一緒に行くはずだったデンマーク旅行をキャンセルされた主人公・咲子。 一人で旅行に行くことになり一度は家を出るものの、咲子はなぜか家に戻ってしまう。 出張中の恋人には「デンマークに着いた」と報告し、部屋に籠もっていたが、偶然知り合った旅行者を家に泊めることになり——

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『ドブ川番外地』

大阪芸術大学 / 2018 / 82min
監督:渡邊安悟(WATANABE Asato)

数年前に自殺した友の死を受け入れられぬまま、無為な日々を送っている引き篭り青年・増村辰巳は、ある夜、両親の自分のことで諍う声にウンザリし、ふらりと家出する。あちこち歩き回り迷い込んだ街で、浮浪者親父・土川士郎と出会い、彼の家で暮らし始めることとなる。 飄然として何事にも拘らぬ性格の土川と過ごすうち、辰巳は段々と笑顔を取り戻して行く。が……。

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1次セレクションでは、応募作品を東学祭委員が「1作品を原則3名以上が鑑賞する」ことを決まりに、2次セレクションに選出する作品を決定しました。短編コンペティション部⾨では17作品、東学祭コンペティション部⾨では28作品が2次セレクションに進みました。 2次セレクションでは東学祭委員に加えて、東学祭委員のOBOGや過去の東学祭⼊選者26名にもご鑑賞頂き、皆様のご感想・ご意⾒を聞きながら、最終的には東学祭委員が上映作品を選出しました。 セレクションの際には原則として多数決は⽤いず、徹底的に討論を重ねることでラインナップを決定しています。
両部門の2次審査に選出されるも、惜しくも上映が叶わなかった29作品をご紹介します(両部門記載)。
『バカヤロウの背中』
監督:藤本匠
『幸福な、』
監督:中須彩音
『Pupa』
監督:石舘波子
『拾って捨てろ!』
監督:小野峻志
『Psyche』
監督:宮本瑛未
『MOWB』
監督:油原和記
『ANIMA』
監督:宮崎渉大
『ムチノセカイ』
監督:唯野浩平
『repeat in the room』
監督:長谷川汐海
『天使は、二度死ぬ』
監督:岡田真一
『マイリトルゴート』
監督:見里朝希
『目の前の街』
監督:松永侑
『チンダルレがはじけたら』
監督:申翔太
『せみしぐれ』
監督:亀平菜緒
『不着の愛』
監督:松本美沙樹
『ひとひら』
監督:吉田奈津美/町田利華
『還る』
監督:堀川湧気
『つたにこいする』
監督:梅村和史
『どくそほくそ笑んでんじゃん』
監督:倉田快晴
『SORROWS』
監督:中濱宏介
『ハイトエラ』
監督:橋本根大
『路上ライブ』
監督:大林泉輝
『見えた世界』
監督:増田晶子
『卒制彼氏三部作』
監督:岡田詩歌
『ZOB』
監督:竹中貞人
『江國さゆりは不感症』
監督:金子陽介
『ピアスとハーモニカ』
監督:後藤 新
『そんなこと考えるの馬鹿』
監督:田村将章
『山田』
監督:馬渕有咲

総エントリー数213作品(平均28.34min.)
東学祭コンペティション部門127作品(平均40.92min.)
短編コンペティション部門86 作品(平均10.09min)
男性監督作品145作品
女性監督作品68作品