実写長編部門受賞結果

ゲスト審査員の瀬々敬久様、三宅隆太様、杉野希妃様より「グランプリ」、「審査員特別賞」が選出されました。

第33回実写長編部門
<グランプリ>『明ける夜に』
監督:堀内友貴 / 東放学園映画専門学校

授賞コメント

瀬々敬久様:
観客賞とグランプリが被る、というのは珍しいことですね笑。この作品は、長編映画としてラストシーンを描けていて、帰着点が明快にありました。モラトリアムという学生特有の身近なものから出発し、スタッフィングやキャスティングの中で大きく輪を広げ、共同制作として作っているという、モチーフと作り方の合致が清々しかったです。

三宅隆太様:
学生映画の意味・現状が変わってきていると感じました。これが2022年の学生映画であるということは事実であるということに変わりはなく、今の学生映画の一つの完成体であると思いました。何よりも、観客が愛しているということを感じ、グランプリに選出しました。

『明ける夜に』

東放学園映画専門学校 / 2022 / 95min.
監督:堀内友貴(HORIUCHI Yuki)

あの日の夜はちょっとだけ特別だった。夏の終わりを目の前にした若者たちの人間模様。予定していた面接が急遽延期になった就活生の山ノ辺とキミ。野球部のマネージャーだった凛子に電話をかける秀一。コンビニでバイト中の健斗とキョーコ。海の近い町で、それぞれの忘れられない一晩が過ぎていく。

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第33回実写長編部門
<審査員特別賞(三宅隆太&杉野希妃賞)>『カンパニュラの少女』
監督:安本未玖 / 京都芸術大学

授賞コメント

杉野希妃様:
監督の独自の世界観に翻弄されました。物語に余白があり、様々な想像を巡らせながら拝見しました。
主人公もおばあさんも声を発しないせいか、蝉やカエルの声、雨の音が際立ち、観客である自分自身の五感が研ぎ澄まされる作品でした。
ウェディングベール、祖母の過去、ホタル、そしてカメラ越しに覗く世界…未知なるものを覗いた時の高揚感はなんと美しいのでしょうか。

三宅隆太様:
テクノロジーの進化というものが、"想い"を形にすることに非常に重要な役割を担っていると感じる作品でした。学生映画というものも、かつての"学生映画"というものから、また一つ、意味の違うものに、より"想い"と直結した作品が生まれる時代になったのだな、と思いながら観ました。

『カンパニュラの少女』

京都芸術大学 / 2022 / 45min.
監督:安本未玖(YASUMOTO Miku)

中学2年生の矢野梓は、祖母・矢野蛍と2人で静かな暮らしをしている。ある日、梓は蛍のタンスからウエディングベールを見つける。毎日学校帰りに、花屋の前に座っている謎の少女を盗撮している梓だが、ベールの発見以降少女と放課後の時間を共に過ごす仲になっていく。『この花ね、昔、子供が中に蛍閉じ込めて家に持って帰ったんだって』 梓は少女に「ほたる」と呼び名をつけ、ファインダーを覗きながらベールを頭に被る彼女の後を追いかける。

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第33回実写長編部門
<審査員特別賞(瀬々敬久&杉野希妃賞)>『ただいま』
監督:劉波 / 武蔵野美術大学

授賞コメント

杉野希妃様:
母親の不在によって繋がる男子高校生2人の少しぎこちない交流が目に焼き付きました。
そして、過去への憧憬、懺悔、やるせなさが胸に迫り、自分ごとのように感じられました。
過去は愛おしくもあり恥ずかしくもあり残酷でもありますが、過去から逃れるのではなく、それらを抱えたまま生きていけばいいと不思議な安心感に包まれる作品でした。

瀬々敬久様:
最も強く、心に残るショットがこの作品にはありました。友人と自転車に二人乗りしているシーンです。感情といい、人物といい、場所といい、、。街灯が暗くなったり、明るくなったりする映画的な効果の中で、感情が爆発する。そんな強いショットだったと思います。言葉や文章にはできない人間の感情が見られました。映画は場所と人間を選ぶ、という意味では最も力強い映画だったと思います。

『ただいま』

武蔵野美術大学 / 2022 / 48min.
監督:劉波(LIU Bo)

長いこと大都会を彷徨っている直人は、いつも、苦しい少年時代に自分に温かく接してくれた友人のタクミのことを思い出していた。しかし、そのタクミもいつしか跡形もなく直人の生活から消え去ってしまった。それは直人が抱えている心の蟠りとなった。
直人はタクミを探すために故郷に戻った。記憶の舞台となった場所で、記憶と現実は交錯し、すべてが美しい昔に戻っていくようであった。

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アニメーション部門受賞結果

ゲスト審査員の岩井澤健治様、細田守様より「グランプリ」、「審査員特別賞」が選出されました。

第33回アニメーション部門
<グランプリ>『サカナ島胃袋三腸目』
監督:若林 萌 / 東京藝術大学大学院

授賞理由

岩井澤健治様:
作品としては非の打ちどころがなく、キャラクターも魅力的に描かれており、物語の構成も、音の演出も素晴らしかったです。特にクラシックの音楽は勉強されているのかなと思うほどで、観ていて「これって、いつの時代の作品なのだろう。」という錯覚に陥る、見事な作品でした。

『サカナ島胃袋三腸目』

東京藝術大学大学院 / 2022 / 17min.
監督:若林 萌(WAKABAYASHI Moe)

魚の腹の奥底に暮らす、豚、魚、オタマジャクシの三人家族の物語。ある日突然、漂着した果実を皮切りに彼らの暮らしは一変する。

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第33回アニメーション部門
<審査員特別賞(岩井澤健治賞)>『HA・NA・KU・SO』
監督:オダアマネ / 東京藝術大学大学院

授賞理由

岩井澤健治様:
台詞の間の取り方、テンポ感だったり、声優さんの演出だったり、見ていてクスクスと笑えるところが沢山あり、楽しませてもらいました。最後に流れる音楽も凄くよく、短編作品でこのような音楽はあまり聞かないと思い、センスを感じました。オダ監督は自信がないとおっしゃっていましたが、絵も凄く良かったですし、こだわりを感じました。

『HA・NA・KU・SO』

東京藝術大学大学院 / 2022 / 7min.
監督:オダアマネ(AMANE Oda)

ある夏の群像劇。ハナクソみたいな私たちの日々に、ひと笑いのhopeを。

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実写短編部門受賞結果

ゲスト審査員の瀬々敬久様、三宅隆太様、杉野希妃様より「グランプリ」が選出されました。

第33回実写短編部門
<グランプリ>『Episodic memory』
監督:鈴木理利子 / 武蔵野美術大学

授賞理由

三宅隆太様:
この作品は、鈴木監督がご自分で演者をやっており、ご自分が生きてきたある種の証である。観客をしっかり楽しませようという作為も明確にある。脚本も書いていて、小説にもしている。だけれども、その場でただ一回限り起きたことの様に見えている、というのは、すごく面白かったです。

杉野希妃様:
ご自身に正直に作っていると感じました。ヌーヴェル・ヴァーグ的な志を感じます。このまま突っ走って欲しいです。

瀬々敬久様:
驚いたのは、ジャンルが未定型というか、どんなジャンルにも収まらない、ということです。自由な私映画である点が素晴らしいと感じました。

『Episodic memory』

武蔵野美術大学 / 2022 / 23min.
監督:鈴木理利子(SUZUKI Ririko)

「自分の感覚が鈍ってきていることに彼女はいち早く気づいていた。ここ数日、人と話をしすぎたのかもしれない。ひとりでいるのも人といるのも両方好きなのに、結局ひとりに戻りたくなる自分は孤独が好きなのだろうかと、ある種の危機感のようなものを覚える」
彼女が自分自身に正直であるのは、自分自身への囚われであり、執着であり、不安であり、宿命である。

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観客賞・受賞結果

特別賞
<観客賞>『明ける夜に』
監督:堀内友貴 / 東放学園専門学校

『明ける夜に』

東放学園映画専門学校 / 2022 / 95min.
監督:堀内友貴(HORIUCHI Yuki)

あの日の夜はちょっとだけ特別だった。夏の終わりを目の前にした若者たちの人間模様。予定していた面接が急遽延期になった就活生の山ノ辺とキミ。野球部のマネージャーだった凛子に電話をかける秀一。コンビニでバイト中の健斗とキョーコ。海の近い町で、それぞれの忘れられない一晩が過ぎていく。

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特別賞・受賞結果

特別賞
<NANLITE賞>『えんまさん』
監督:鈴木智貴 / 立命館大学

『えんまさん』

立命館大学 / 2022 / 75min.
監督:鈴木智貴(Suzuki Tomoki)

「私にとってこの世界は、何もかもまがい物の世界なんです」
鏡を見ると相手の隠し事・嘘を文字として浮かび上がらせる力を持っている高校2年生、倉田廻麻。力を手にしてからというもの極度な人間不信となってしまった彼女は、ある日嘘をついた事が無い少女、正羅と出会う。正羅との交流を通して廻麻は少しずつ心を開いていくが…。。

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