第34回東京学生映画祭の始まりを飾る企画として、1960年代〜80年代に至るまで、個人・学生映画の歴史を振り返る企画を開催致します。現在の学生達に観てほしい作品を自信を持って実行委員が選出させて頂き、時代ごとの2プログラムに分けての上映を行います。 また、フィルムを用いた映画制作の難しさと学生映画の流れを体感していただければと思い、可能な限り当時学生たちが制作を行っていた8㎜、16㎜フィルムで作品を上映致します。そして上映企画後の当映画祭のコンペ作品と合わせて、過去と現在を見つめ直し、学生映画の新たな意味と可能性の発見へと繋がれば幸いです。

|プログラムⅠ上映作品紹介

『喰べた人』

1963/モノクロ/24min./スタンダード/M/HD
監督:大林宣彦・藤田一友
撮影:大林宣彦
キャスト:松下砂稚子・岸田森・秦和夫・草野大悟・石崎仁一・肝付隆也
受賞歴:ベルギー国際実験映画祭審査員特別賞

あらすじ:二科会の画家・藤野一友と共作。それまで8ミリを回していた大林監督初の16ミリ短編自主映画。あるレストランで客の旺盛な食欲を見ているうちに、貧血で倒れたウェイトレスの幻想。コックは手術台でウェイトレスのお腹を解剖し…。あまりにシュールで実験的なファンタジー。

©株式会社大林宣彦事務所

『EMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ』

1966/カラー/40min./スタンダ-ト/M/HD
監督:大林宣彦
脚本:羽生杏子
キャスト:石崎仁一・田端エミ・赤坂サリ

あらすじ:ロジェ・ヴァディム監督のドラキュラ映画『血とバラ』へのオマージュを、自らの青春とつなぎ合わせて抒情的に表現した大林宣彦初期の自主制作16ミリ作品。コマ撮りや字幕の多用などに大林宣彦の手腕が発揮されている。

©株式会社大林宣彦事務所

監督:大林宣彦(OBAYASHI Nobuhiko)

1938年1月9日広島県尾道市生まれ。3歳の時に自宅の納戸で発見した活動写真機で個人映画の製作を始める。上京後、16㎜フィルムによる自主製作映画『ÈMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ』が、画廊・ホール・大学を中心に上映され、時代の寵児と高い評価を得る。『喰べた人』(63)はベルギー国際実験映画祭で審査員特別賞を受賞。この頃からテレビコマーシャルの草創期に本格的に関わり始め、チャールズ・ブロンソンの「マンダム」、ソフィア・ローレン、カトリーヌ・ドヌーヴなど外国人スターを多数起用、その数は2000本を超える。

1977年『HOUSE/ハウス』で商業映画にも進出。同年の『瞳の中の訪問者』と共に“ブルーリボン新人賞”を受賞。故郷で撮影された『転校生』(82)『時をかける少女』(83)『さびしんぼう』(85)は“尾道三部作”と称され親しまれている。『異人たちとの夏』(88)で“毎日映画コンクール監督賞”、『北京的西瓜』(89)“山路ふみ子監督賞”、『ふたり』(91)“アメリカ・ファンタスティックサターン賞”、『青春デンデケデケデケ』(92)“平成4年度文化庁優秀映画作品賞”、『SADA』“ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞”、宮部みゆき原作『理由』(04)は“日本映画批評家大賞・監督賞”、“藤本賞奨励賞”を受賞。東日本大震災を受けた『この空の花-長岡花火物語』(11)ではTAMA映画賞“最優秀作品賞”ほか多くの賞を受賞。同時期の作品に、少年少女版『この空の花』として製作されたAKB48のPV『So long ! THE MOVIE』(13)、北海道芦別市を舞台にしたふるさと映画『野のなななのか』(14)。クランクイン直前に癌の余命宣告を受けながらも完成させた『花筐/HANAGATAMI』(17)ではキネマ旬報“監督賞”ほか受賞。

《永遠の最新作》となった『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(20)は、繰り返す癌の転移に臆することなく最期まで命をかけて撮影現場で演出をし続けた遺作。第32回東京国際映画祭“特別功労賞”、広島国際映画祭2019“ヒロシマ平和映画賞”、第24回ファンタジア国際映画祭“カメラ・ルーダシア部門 審査員特別賞”、第12回TAMA映画賞“最優秀作品賞”、第42回ヨコハマ映画祭“作品賞”“ヨコハマ映画祭大賞”“2020年度日本映画ベストテン第1位”、第94回キネマ旬報ベスト・テン“日本映画ベスト・テン第2位”、“日本映画監督賞”、第71回芸術選奨文部科学大臣賞“映画部門”ほか世界中の映画人から賞賛を受ける。

2020年4月10日逝去。2004年春の紫綬褒章受章、2009年秋の旭日小綬章受章。2019年文化功労者頸彰。死没日をもって従四位叙位、旭日中綬章追贈。

特別上映『おかしさに彩られた悲しみのバラード』

1968/カラー/16ミリ/13min. ※DVD上映
監督:原將人
受賞歴:第1回フィルムアートフェスティバル東京 グランプリ ATG賞

あらすじ:ある日、家を追い出された高校生の「僕」は、カメラと三脚を持って「金があったら映画が撮りたい」と歩きだす。時代はヴェトナム戦争の反戦運動が高まる時代。退屈するひとりの少女も巻き込んで、「映画を撮ることについての映画」が進行する。トリュフォーの『大人は判ってくれない』にオマージュを捧げた浜辺のラストシーンがすばらしい。

監督:原將人(HARA Masato)

1950年生まれ。1968年、高校在学中に友人と製作した短編映画『おかしさに彩られた悲しみのバラード』が、第1回フィルムアートフェスティバル東京においてグランプリおよびATG賞をW受賞する。 その後の1970年、大島渚監督の『東京戦争戦後秘話』の脚本を佐々木守とともにてがけ、予告編を演出。 1973年、独自の映画理論と映画哲学を詰め込んだ『初国知所之天皇』を発表し、独自のスタイルで、新しい映画の地平を切り開き、インディーズ映画の傑作として語り継がれる。 1997年、商業デビュー作『20世紀ノスタルジア』、日本映画監督協会新人賞を受賞。 2002年、第1回フランクフルト国際映画祭にて、ライブ映画『MI・TA・RI!』を発表。デジタル・プロジェクター1台、8ミリ映写機2台による3面マルチで上映し、ナレーションと音楽を生でライブ。 2022年、自身の自宅全焼の体験からの再起を写した『焼け跡クロニクル』が劇場公開。 その他、芭蕉の『奥の細道』を追った個人映画『百代の過客』(1995年)などがある。

|プログラムⅡ上映作品紹介

『TURN POINT10:40』

1979/8ミリ/33min.
監督・脚本:小中和哉
特技監督:笹平剛(利重剛) 製作:成蹊高校映画研究部
キャスト:小沢広志・山本奈津子
受賞歴:日本映像フェスティバル高校生部門大賞

あらすじ:高校生カップルがぎこちないデートをしていると、突然周囲の時間が逆転し始める。二人以外の人も車も逆に動き始める。それは飛来した宇宙船の仕業だった。着陸した宇宙船へ乗り込んだ二人は、宇宙人による人類進化矯正計画を知る。果たして人類の運命は?!

『いつでも夢を』

1980/8ミリ/3min.
監督・撮影:小中和哉
製作:BCA(Bear's Cinema Artists)
キャスト:大村卓也・川上裕子
受賞歴:1980年富士8ミリコンテスト学生グランプリ

あらすじ:橋幸夫と吉永小百合の名曲に乗せて送る明朗快活学園ミュージカル!

監督:小中和哉(KONAKA Kazuya)

1963年生まれ。兄•千昭学校(現在脚本家)と共に小学生の頃から8ミリ映画制作を始める。初監督作品は中学2年で撮った『CLAWS』。

成蹊高校映画研究部では手塚眞や利重剛と共に8ミリ映画を作り、立教大学進学後は黒沢清、塩田明彦らが在籍したSPP(セントポールズプロダクション)を拠点に自主映画を続ける。

大学卒業の春に撮った文芸坐出資の16ミリ『星空のむこうの国』(1985)で商業映画デビュー。

『ウルトラマンゼアス2』(1997)以降の平成ウルトラマンシリーズをテレビ、映画とも数多く手掛ける。

代表作 『くまちゃん』(1993) 『なぞの転校生』(1998) 『ウルトラマンティガ•ダイナ&ガイア』(1999) 『ULTRAMAN』(2004) 『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(2006) 『東京少女』(2008) 『七瀬ふたたび』(2010) 『赤々煉恋』(2013) 『VAMP』(2018) 『星空のむこうの国』(2021)

本年3月に公開した新作『Single8』は、僕の高校での8ミリ映画作りを題材にした自伝的作品です。その中で主人公たちが作り上げる『タイムリバース』の元ネタが『TURN POINT 10:40』です。これを作り上げる過程であったことを『Single8』で描きました。色々アレンジしてますが、映画の内容はかなり同じで、『TURN POINT 10:40』の映像も一部そのまま使ったりしてます。

『Single8』も観てもらえると更に楽しめると思いますので、ぜひ観てください。

映画作りは映画を観ることよりも楽しい!と訴える内容なので、自主映画に関わる皆さんにも共感してもらえると思います。

ミュージカル映画製作に向けて、リップシンクが可能かテストするために作った短編です。結局その後本格的なミュージカル映画を製作することはできなかったのですが。ラストカット、二重露出で空に浮かぶ女の子と男の子の口パクを合わせるのにとても苦労して何度もリテイクしました。

『MOMENT』

1981年/8mm/ステレオ/75分
監督・脚本・編集:手塚眞
撮影:今関あきよし  助監督:小林ひろとし  録音・効果:佐々木明広  ミックス:玉手久也
共同プロデューサー:湯本ひろゆき  音楽:HANG RAIGI・中谷靖・青山さおり、他  主題歌:作詞 奈良橋陽子 作曲 タケカワユキヒデ
キャスト:矢野ひろみ・今井萠・斉川由美・船越英一郎・豊田和男・西村良明・小林ひろとし・石上三登志、他
受賞歴:1983年ベルリン映画祭ヤングフォーラム招待

あらすじ:高校生のポッキーはドジだけれど人気者。ある日、100%当たる占い師に「三日後に死ぬ」と言われてしまう。しかもその占い師は自分も予言通りに死んでしまう。落ち込むポッキーだが、友人たちは真面目に取り合ってはくれず、恋の橋渡しを相談されたり、新しいボーイフレンドが現れたりと落ち着かない。
そんなとき、ポッキーは心臓病で余命わずかという少年に出会う。「私が死んだら、私のハートをプレゼントする」と約束する。一方、ボーイフレンドの友人ハルヤは、手製爆弾で街を吹き飛ばす計画を進めていた。刻一刻と死に向かってゆくポッキーの周囲で、波瀾万丈の騒動が巻き起こってゆく。

監督:手塚眞(TEZKA Macoto)

1961年東京生まれ。ヴィジュアリスト/映画監督

高校時代から8mmフィルムによる映画制作を始め、多くのコンテストで受賞。大島渚、大林宣彦らの支持を受ける。以降、ヴィジュアリストという肩書きで映画、ビデオの監督をはじめ、実験映像やドキュメンタリー等、あらゆる映像メディアで作品を発表している。

また、イベントの企画演出や本の執筆、音楽のプロデュース等、創作活動全般も行なっている。1985年『星くず兄弟の伝説』で商業映画監督デビュー。1991年黒澤明監督『八月の狂詩曲』のメイキング・ビデオを演出。1995年富士通のPCソフト「TEO ~もうひとつの地球」をプロデュース。19カ国で50万本のヒットとなる。1999年『白痴』がヴェネチア国際映画祭(デジタル・アワード受賞)、釜山国際映画祭等に招待される。2001年東アジア競技大会大阪大会の開会式演出を行う。テレビ・アニメ『ブラック・ジャック』を監督し、2006年東京アニメアワード優秀作品賞受賞。手塚治虫の遺族としても活動しており、宝塚市立手塚治虫記念館のプロデューサー、名誉館長でもある。他の代表作は『MODEL』(1987)、『NUMANITE』(1995)、『ブラックキス』(2005)、『ばるぼら』(2019)など。

「喜劇仕立ての悲劇」というコンセプトで、あたかもマンガのような世界が目まぐるしく展開してゆくこの学生時代の代表作は、「学生映画の代表作」とまで言われた人気8mm映画でした。受験中に一晩で書き上げたシナリオを、大学の一年間を捧げて映画化しました。とは言っても大学映研の映画ではなく、一般からキャスト、スタッフを募集した完全なインディーズ映画。上映当時のコピーは「まだ若いと思っているあなた、10代の感性について来られる?」というものでしたが、18歳にしては頑張ったと思います。

❙ トークショー

各プログラム上映後、トークショーの開催を致します!!
ここだけの貴重なトークをぜひ会場でお楽しみください!
【チケット詳細】
<前売り>
学生:500円/一般:1000円
学生通し:700円/一般通し:1400円
<当日>
学生:800円/一般:1500円
学生通し:1000円/一般通し:2000円

13:00~ 16mm企画トークショー

小中和哉監督・手塚眞監督・原將人監督 クロストークイベント
※原監督はzoomでのご出演となります。

16:10~ 8mm企画トークショー

小中和哉監督・手塚眞監督 トークイベント