現在、映画を見る時にはほぼ必ずと言っていいほど宣伝、「どこどこで何とか賞を受賞!」などの前情報や、友人からの口コミなど、多くの先入観が付きまとってしまいます。しかし、東学祭のセレクションで応募作品を見る時に委員内で共有される知識は、監督名、タイトルと尺、それから「学生が製作した映画」という前提だけ。

選定する立場にある私たちは、評判や誰かの評価といった後ろ盾がないまま、ありのままの映画と裸一貫で向き合わねばなりませんでした。こんな風に映画を見る経験は本当に貴重で、考えてみると、東学祭のセレクションだったからこそのとても自由で有意義な映画体験だったと思います。213本の映画を完成させた学生映画人に感謝するとともに、敬意を表します。

第30回東学祭に応募して下さった皆様、本当にありがとうございました。

そんな私たちが全力で向き合い、上映が決定した16本の映画をご紹介します。「学生映画を学生である私たちが選ぶ」とはどういうことなのか、考えに考えさせられ、未だきちんとした答えは出ていませんが、この16本の映画が答えらしき何かに導いてくれると信じています。

第30回東京学生映画祭企画委員会

『愚か者、HINAのためのセレナーデ』

日本大学芸術学部 / 2019 / 11min
監督:塩川孝良(SHIOKAWA Takayoshi)

日本大学藝術学部映画学科三年実習作品。高校生活最後の夏、戸松にフラれた日菜子はある日学校へ行くと、戸松がクラスメイトの彩花と楽しそうに会話しているのが目に映る。放課後、帰ろうとしていた日菜子は駐輪場で彩花に遭遇する。「戸松のことが好き? だったら戸松の家まで競争ね」と、彩花は自転車で駆け出す。日菜子と彩花による、愛を賭けたママチャリ・レースが始まる。

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『がんばれ!よんぺーくん』

東京造形大学大学院 / 2018 / 4min
監督:しょーた(Shota)

少年よんぺーくんの元気な日々を描いたアニメーション。今回は〝おつかいにいこう!の巻〟です。

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『何度でも忘れよう』

東京藝術大学大学院 / 2019 / 11min
監督:しばたたかひろ(SHIBATA Takahiro)

何故、受け入れられようとするのか。受け入れてもらえないのなら、何を受け入れてもらいたかったのかすら忘れてしまって、いつものように美味しくスープを飲めばいい。

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『東京少女』

専門学校東京ビジュアルアーツ / 2019 / 9min
監督:橋本根大(HASHIMOTO Nebiro)

もうすぐこの時代が終わるらしい。みんなそう言っているから本当に終わるのだろう。時代が終わるが私は終わらない。時代は変わっても多分私は変わらない。私の今日は私の昨日を「command C」 + 「command V」したみたいなそんな今日だ。

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『Fiction』

東京学芸大学 / 2018 / 15min
監督:北川未来(KITAGAWA Miku)

次の作品のアイディアが浮かばない脚本家、夫の出張中に浮気をする妻とその浮気相手、強盗のプロと今日初めて強盗する男、そして完璧主義の編集者。 6人のストーリーがひょんなことから繋がっていく。

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『くじらの湯』

東京藝術大学大学院 / 2019 / 7min
監督:キヤマミズキ(KIYAMA Mizuki)

日本のとある街で、1日の終わりに近所の銭湯へ通う母。 娘がついて行くと、不思議な行動をとる一部の女たちと、それに溶け込む、よく知らない母の姿を目の当たりにする。

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『ティッシュ配りの女の子』

東京藝術大学大学院 / 2018 / 15min
監督:渡邉安悟(WATANABE Asato)

東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻夏期実習作品。 日常に在ったティッシュ配りの女の子の不在を通して、カフェで働く早川栞を軸に、翻弄される人びとのドタバタを描く。

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両部門の2次審査に選出されるも、惜しくも上映が叶わなかった29作品をご紹介します(両部門記載)。

『バカヤロウの背中』
監督:藤本匠
『幸福な、』
監督:中須彩音
『Pupa』
監督:石舘波子
『拾って捨てろ!』
監督:小野峻志
『Psyche』
監督:宮本瑛未
『MOWB』
監督:油原和記
『ANIMA』
監督:宮崎渉大
『ムチノセカイ』
監督:唯野浩平
『repeat in the room』
監督:長谷川汐海
『天使は、二度死ぬ』
監督:岡田真一
『マイリトルゴート』
監督:見里朝希
『目の前の街』
監督:松永侑
『チンダルレがはじけたら』
監督:申翔太
『せみしぐれ』
監督:亀平菜緒
『不着の愛』
監督:松本美沙樹
『ひとひら』
監督:吉田奈津美/町田利華
『還る』
監督:堀川湧気
『つたにこいする』
監督:梅村和史
『どくそほくそ笑んでんじゃん』
監督:倉田快晴
『SORROWS』
監督:中濱宏介
『ハイトエラ』
監督:橋本根大
『路上ライブ』
監督:大林泉輝
『見えた世界』
監督:増田晶子
『卒制彼氏三部作』
監督:岡田詩歌
『ZOB』
監督:竹中貞人
『江國さゆりは不感症』
監督:金子陽介
『ピアスとハーモニカ』
監督:後藤 新
『そんなこと考えるの馬鹿』
監督:田村将章
『山田』
監督:馬渕有咲

総エントリー数213作品(平均28.34min.)
東学祭コンペティション部門127作品(平均40.92min.)
短編コンペティション部門86 作品(平均10.09min)
男性監督作品145作品
女性監督作品68作品

1次セレクションでは、応募作品を東学祭委員が「1作品を原則3名以上が鑑賞する」ことを決まりに、2次セレクションに選出する作品を決定しました。短編コンペティション部⾨では17作品、東学祭コンペティション部⾨では28作品が2次セレクションに進みました。
2次セレクションでは東学祭委員に加えて、東学祭委員のOBOGや過去の東学祭⼊選者26名にもご鑑賞頂き、皆様のご感想・ご意⾒を聞きながら、最終的には東学祭委員が上映作品を選出しました。

セレクションの際には原則として多数決は⽤いず、徹底的に討論を重ねることでラインナップを決定しています。