第21回東京フィルメックスにて、毎年、東京学生映画祭が運営している学生審査員賞。2名の東学祭入選監督と1名の東学祭企画委員によって学生審査員を構成し、東京フィルメックスの期間中にコンペティション作品全12本を鑑賞、審議の上1作品を学生審査員賞として授与しています。

 

今年は第31回東学祭より短編コンペティション部門において準グランプリを受賞した『こちら放送室よりトム少佐へ』の千阪拓也監督、第30回東学祭コンペティション部門『なみぎわ』、第32回東学祭短編コンペティション部門『Female』で2度の入選を果たした常間地裕監督、そして東学祭企画委員より田伏夏基が学生審査員を務めました。

 

11月7日(土)に行われた授賞式にて、今年の学生審査員賞受賞作『由宇子の天秤』を発表、春本雄二郎監督に授与させていただきました。

『由宇子の天秤』海外版予告編

第21回東京フィルメックス
<学生審査員賞>『由宇子の天秤』
監督:春本雄二郎(HARUMOTO Yujiro)

授賞理由:主人公はドキュメンタリー監督として、強い信念を持ちながら、社会に対して、問題を問いかける側であり本当の真実は何であるのかと言うことを伝える側の人間である。

しかし、個人的な家庭問題により自らも加害者家族となったことで二つの対極の立場に立たされることとなり、天秤の様に揺れ動きながら進んでいく姿に引きつけられ、私たちの心も揺さぶられ始めた。

他人事では済まされない、SNSの発達によりあらゆる人が発信者となった今、まさに世に響き渡り、必要とされる映画であり、より多くの人に届いて欲しいと思わされる映画だと思いました。

『由宇子の天秤』 A Balance

日本 / 2020年 / 152分
監督:春本雄二郎(HARUMOTO Yujiro)
製作:映画「由宇子の天秤」製作委員会

主人公は女子高生自殺事件を追うドキュメンタリー監督の由宇子。事件の真相に迫りつつある由布子は、学習塾を経営する父から衝撃的な事実を知らされる……。デビュー作『かぞくへ』に続く春本雄二郎の監督第2作。瀧内公美、光石研、河合優実、梅田誠弘が出演。

春本雄二郎監督受賞コメント
この度は学生審査員賞という素晴らしい賞を受賞して、スタッフ・キャストを代表して感謝の気持ちでいっぱいです。『由宇子の天秤』はすでに平遥国際映画祭と釜山国際映画祭で受賞しているんですけれども、2つともコロナの影響でオンラインでも授賞式に立ち会えておらず、こうして東京フィルメックスでフィジカルに賞を頂けたことは感慨深い気持ちでいっぱいです。

私は英語表現の「Winner」という表現に違和感を感じます。今、まさに行われているアメリカ大統領選挙では、州ごとの当選者が発表されるごとに「Project Winner」という表現がされます。そこでいつも思うのは、映画も政策も「そこに敗者が果たして存在するのか」ということ。世の中が「敵か、味方か」「勝者か、敗者か」「白か、黒か」という単純に二極化されてしまう、分断されてしまうといった流れが非常に加速しているように感じます。

果たしてそういった考え方は私たちにとって本当に良いのか。私の作品『由宇子の天秤』は正しさを信じて疑わない人の危うさについて問うています。今、私たちにとって必要なものは「私たちに見えている世界というモノが、いかに自分たちにとって都合の良い様に最適化されていて、そのことに気づけるか」ではないかと思っています。

そして、「その最適化されている世界の外側に目を向けること」こそが必要なのではないかと思っています。映画には、最適化されている世界の外に(私たちを)繋げる力があり、そういった作品をこれからも作っていきたいと思います。

学生審査員賞を受賞し、これからの日本を担う若い皆さんに対して、社会に対して狭い視野にならないような映画を作っていくことが私の責務であると感じ、私の映画作りが若い世代の指針なれば良いなと思います。

『由宇子の天秤』は2021年全国劇場公開予定。すでに釜山映画祭ニューカレンツ部門の最高賞ニューカレンツ・アワード、平遥映画祭でロベルト・ロッセリーニアワード 審査員賞・観客賞も受賞している本作。今後もシンガポール映画祭、マカオ映画祭への出品が決まっていて、まだまだ躍進に期待です!

本当に劇場でご覧頂きたい1本なのでぜひお楽しみに!

 

東京フィルメックスHP:https://filmex.jp

 

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